『機動戦士ガンダムSEED』に登場するラウ・ル・クルーゼ。ザフト屈指の指揮官として知られ、作中でもトップクラスの軍事的才能を見せた人物です。しかし、その正体はコーディネーターではなく、“ナチュラルのクローン”。
本記事では、コーディネーター社会の頂点に立った男が、実はナチュラルだったという皮肉と矛盾、そしてそれが彼の思想に与えた影響を掘り下げます。
ラウ・ル・クルーゼという人物
ザフト最上位クラスのエリート軍人
ラウ・ル・クルーゼはザフトの精鋭部隊「クルーゼ隊」を率いるエース指揮官です。戦術・操縦・判断力のすべてが高水準で、ザフト内部でも「トップクラス」と評されていました。
コーディネーターは遺伝子調整によって高い能力を与えられている世界。その中でエリート中のエリートに数えられた時点で、クルーゼが“とてつもない才能を持っていた”のは間違いありません。
しかし正体はナチュラルのクローン
そんな彼が実はナチュラルのクローンであるという事実は、SEED屈指の衝撃設定です。オリジナルはムウ・ラ・フラガの父、ユーラシア連邦の軍需企業のトップ。
つまりクルーゼは、遺伝子調整を受けたコーディネーターではなく、本来は“コーディネーター社会で最も軽視される存在”であるナチュラルの複製体でした。
矛盾を超えた才能:なぜナチュラルがコーディネーター社会の頂点へ?
遺伝子調整を受けていないのに突出する軍事能力
コーディネーター社会では、戦闘能力・知能・反応速度などが遺伝子調整によって底上げされています。その中で、調整を受けていないナチュラルのクローンであるクルーゼが“頂点”に立っていた。
これは生身のナチュラルがオリンピックで強化選手全員を圧倒するようなもの。設定的にも異常ですが、物語的には非常に重要な意味を持っています。
劣等感ではなく“観察者”としての冷静さ
クルーゼはコーディネーターに対し劣等感を抱くことはありませんでした。むしろ「自分は遺伝子操作の外にいる存在」であることを理解した上で、冷静にコーディネーター社会を見つめていました。
彼は“人類全体”を俯瞰する視点を持っていた。それは、遺伝子に自信を持つコーディネーターでは獲得しにくい境地です。
ナチュラルでありながらザフトで評価された理由
ザフト内での評価は、遺伝子ではなく実力によるものでした。中でも以下の能力は突出しています:
・戦場の流れを読む洞察力
・冷静すぎるほどの合理性
・部隊をまとめる統率力
・NT的とも言える直感的操縦
これらは“コーディネーター特有の能力”ではなく、クルーゼ固有の資質でした。この事実が、彼が「実はナチュラルだった」という設定を強く支えています。
ナチュラルであることが思想に与えた影響
「選ばれし遺伝子」という幻想から最も遠い男
コーディネーターには優越意識があります。しかしクルーゼはその価値観から完全に外側にいました。
彼は自分が“劣っている”とは考えず、むしろ「遺伝子で人間を区別する発想そのものが浅い」と悟っていたのです。
人間の本質を最も直視していた
クルーゼの有名な台詞に、「人は自分を理解することすらできない」というものがあります。この言葉は、コーディネーター社会の価値観とは真逆です。
ナチュラルとして、遺伝子の優劣ではなく、人間の矛盾・欲望・愚かさを真正面から見ていたからこそ、あの思想に到達したのです。
自分の“作られた存在”を最も理解していた
クルーゼは、自分がクローンとして作られたことを隠しませんでした。むしろ「これが人間の業だ」と受け入れています。
その姿勢は、遺伝子で未来を決めようとするコーディネーターとは対照的であり、もっとも“自然”で“ナチュラル”です。
皮肉としての「実はナチュラルだったラウ・ル・クルーゼ」
ザフト最強クラスがナチュラルだったというねじれ
種族を超えた才能。遺伝子操作を信仰する社会で、遺伝子操作されていない者がトップに立つ。
これはSEEDという作品が持つテーマ――遺伝子に未来を託す愚かさ――を象徴する構図でもあります。
彼の正体は、SEED世界の価値観そのものを批判していた
もしクルーゼがコーディネーターだったなら、「遺伝子の優越」が彼の強さの根拠になってしまう。しかし実際にはその逆。
「ナチュラルでも頂点に立てる」
ことを“存在そのもの”で証明していたのがラウ・ル・クルーゼでした。
まとめ
彼は“遺伝子に縛られない”存在だった
ラウ・ル・クルーゼが恐ろしいのは、戦闘能力や思想の過激さではありません。「遺伝子で人間を決めつける思想」を最も冷静に見抜いていたことです。
ナチュラルのクローンでありながら、ザフト最上位の軍人として君臨した事実は、SEEDという作品のテーマを象徴しています。
実は誰より“ナチュラル”だった男
コーディネーター社会の頂点に立ちながら、遺伝子の物語に縛られなかったラウ・ル・クルーゼ。
彼こそ、ガンダムSEEDにおいて最も“ナチュラル”な男だったのかもしれません。



